構造背筋法【初級】
「背筋を鍛える」と、「反る」は同じではない。

うつ伏せになり、上體を床から持ち上げる。

一般に「背筋運動」と呼ばれる運動です。

背中の筋肉を鍛えるために、背筋へ力を入れて上體を持ち上げる。
高く反ろうとすれば、さらに強く背中へ力を入れる。

しかし、ここで一つの問題があります。

人間が「反る」という運動は、本当に背筋だけで行われているのでしょうか。

背筋が働くことと、背筋だけを運動の主体として
上體を反らすことは同じではありません。

構造背筋法【初級】では、背筋へどれだけ負荷を与えられるかではなく、
上體反らしという運動そのものを身躰構造から研究します。

 

◆「背筋を使わない」という話ではない。

上體を反らせば、背部の筋肉は働きます。

構造背筋法は、それを否定するものではありません。

問うているのは、背筋が働いたかどうかではなく、

どのような身躰運動の中で、背筋が働いたのか。

ということです。

脊椎や肋骨を十分に動かさないまま、腰部へ運動を集中させて
上體を持ち上げることもできます。

反対に、脊椎をはじめとする複数の骨格構造が運動へ参加する中で、
背筋が働くこともあります。

外から見れば、どちらも「上體が反った」という結果になります。

しかし、その内部で起きている運動まで同じではありません。

 

◆「腰を反る」とは、何をしているのか。

「もっと腰を反って」

運動指導では、こうした言葉が使われることがあります。

しかし、身躰構造として考えるなら、ここで立ち止まる必要があります。

「腰」と呼んでいるものは何なのか。

「反る」とは、具体的にどの構造がどう動くことなのか。

人間の背部には一本の板が入っているわけではありません。
頸椎、胸椎、腰椎という複数の椎骨があり、その下には仙骨があります。
胸椎には肋骨が関係し、仙骨は骨盤を構成する寛骨との関係を持っています。

したがって、「腰を反る」という一言だけでは、
上體反らしの中で起きている運動を十分に説明できません。

構造背筋法では、実際にどの骨が動き、構造間関係がどう変化した
結果として「反る」という運動が成立したのかを見ていきます。

 

◆脊椎を、一つの塊として扱わない。

上體反らしを考える上で、脊椎は重要な研究対象です。

脊椎は、一本の長い骨ではありません。

複数の椎骨が連なって構成されています。

それにもかかわらず、背筋運動では體幹部を一つの塊として持ち上げ、
その運動を腰部や背部の筋力で成立させようとすることがあります。

構造背筋法で研究するのは、単に「背中を持ち上げる」ことではありません。

脊椎動物である人間が反る時、脊椎そのものに何が起きているのか。

ここまで入って初めて、「反る」という身躰運動を構造として見ることができます。

 

◆肋骨は、上體反らしと無関係ではない。

胸部を構成する肋骨は、脊椎と関節しています。

つまり、胸椎の運動を考える時、肋骨との関係を切り離すことはできません。

上體を反らす時、胸椎だけを抽象的に「動かす」と考えるのではなく、
胸椎と肋骨の間でどのような運動が起きているのかを見る。

ここが動かなければ、その分を別の部位で補うこともできます。

そして、外から見れば同じように「反っている」ように見える。

だからこそ、構造背筋法では反った角度だけを評価しません。

どこで、その反りをつくったのか。

その中身を研究します。

 

◆骨盤からも、反る運動を切り離さない。

脊椎の下方には仙骨があります。

そして仙骨は、左右の寛骨とともに骨盤を構成しています。

上體を反らす時、脊椎だけを取り出して考えることはできません。

骨盤はどうなっているのか。

仙骨と寛骨の関係はどう変化しているのか。

さらに、その下にある大腿骨や下肢との関係はどうなっているのか。

上體反らしだから上半身だけを見るのではなく、反っている人間全体を見る。

構造背筋法では、ここまでを一つの運動として扱います。

 

◆「高く反れる」ことだけを目標にしない。

上體反らしでは、床からどれだけ高く胸を持ち上げられたかが目につきます。

しかし、高く上がったという結果だけでは、その運動が
どのように成立したのかは分かりません。

特定の部位へ運動を集中させても、上體を高く持ち上げることはできます。

重要なのは高さそのものではなく、その高さに至るまでに、
どの構造がどのように運動したのかです。

反る角度を競う前に、一回の上體反らしを調べる。

構造背筋法【初級】では、そこから始めます。

 

◆全身骨の「互動」として反る。

脊椎、肋骨、骨盤、肩甲骨、上肢、下肢、頭蓋骨。

これらは、身体の中で無関係に置かれているわけではありません。

それぞれが構造的な関係を持っています。

一つの構造が動けば、他の構造との関係も変化する。

フィジカリストOuJi身躰構造學では、このように複数の構造が
互いに動き合うことを「互動」として研究しています。

構造背筋法も、上體反らしをこの互動から捉えます。

背中の一部だけで上體を持ち上げるのではなく、全身骨格が
運動へ参加できる上體反らしをつくる。

その中で、背筋も働きます。

 

◆「背筋を鍛える」前に、「反れる身躰」をつくる。

筋力が必要ないという話ではありません。

背筋を鍛えることが間違っているという話でもありません。

筋肉は、実際の身躰運動の中で働きます。

だからこそ、その筋肉がどのような骨格運動の中で
働いているのかを見る必要があります。

脊椎や肋骨などの構造を十分に動かさないまま、
背部の筋力だけを強くしていくのか。

それとも、全身骨格が運動へ参加できる身躰をつくり、
その運動の中で背筋を働かせるのか。

構造背筋法が研究するのは後者です。

 

◆腹筋と背筋を、別々の身躰として考えない。

構造腹筋法では、仰向けから上體を起こす運動を研究します。

構造背筋法では、うつ伏せから上體を反らす運動を研究します。

運動方向は異なります。

しかし、どちらを行うのも同じ人間です。

腹筋運動の時だけ存在する骨格と、背筋運動の時だけ存在する
骨格があるわけではありません。

同じ脊椎、同じ肋骨、同じ骨盤、同じ上下肢を使って、
人間は異なる方向へ運動します。

だから構造背筋法を學ぶことは、
単に「身体の後ろ側を鍛える」ことではありません。

一つの身躰が、どのように前後方向の運動を成立させているのか
を理解する研究でもあります。

 

◆構造背筋法【初級】で學ぶこと

本講座では、背筋へ強く効かせる方法や、上體をできるだけ
高く持ち上げる方法から始めません。

まず、自分が現在どのような身躰運動によって反っているのかを観察します。

脊椎はどこで動いているのか。肋骨は運動へ参加しているのか。
骨盤との関係はどうなっているのか。上肢や下肢を含めた全身の構造は、
一回の上體反らしの中で何をしているのか。

それらを実践によって確認しながら、「反る」という運動を
身躰構造から捉え直します。

問うのは、

どれだけ背筋を使ったかではなく、どのような身躰運動の中で背筋が働いたのか。

構造背筋法【初級】は、その違いを自らの身躰で研究するための講座です。

 

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『構造背筋法【初級】』

背筋は働く。

しかし、人間は背筋だけで反るのではない。

脊椎、肋骨、骨盤、上肢、下肢を含む全身骨格が運動する中で、背筋が働く。

だから、背筋運動を筋肉だけの問題にしない。

「反る」という運動そのものを、全身の身躰構造から研究する。

力ではなく、構造で反る。

背筋運動を、全身骨運動へ。

それが、構造背筋法【初級】です。


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