構造歩行法【初級】
ー 歩きは、すべての動作の原点である。

人間は毎日歩きます。

特別な運動をしない人であっても、立ち上がり、足を運び、目的の場所まで移動する。
その意味で歩行は、人間にとって最も基本的な身躰運動の一つです。

ところが、これほど日常的に行っている運動でありながら、自分が実際に
どのような身躰構造を使って歩いているのかを知っている人は多くありません。

歩幅を広くする。腕を振る。足を真っ直ぐ出す。踵から着く。姿勢を良くする。
一般的な歩行指導では、こうした外形的な「歩き方」が示されることがあります。

しかし、構造歩行法で研究するのは、その前にある問題です。

その一歩は、身躰のどこから生まれているのか。
ここから歩行を見直します。


◆「歩き方」ではなく、「歩いている身躰」を見る。

同じように歩いているように見えても、
身躰内部で起きている運動まで同じとは限りません。

足部だけを使って歩いている人もいれば、大腿骨や寛骨の運動が
十分に現れていない人もいる。體幹部を一塊にしたまま
脚を前後させている場合もあります。

したがって、歩行を外から見える足の軌道だけで捉えることはできません。

構造歩行法では、足部、大腿骨、寛骨、骨盤、脊椎、肋骨、肩胛骨、
上腕骨、前腕骨、手骨など、歩行に関係する全身の構造を観察します。

重要なのは、これらを個別の部位として見るだけではなく、
一歩の中でそれぞれの構造間関係がどのように変化しているのかを見ることです。

歩行は、脚だけで行う運動ではありません。


◆足を前へ出すだけでは、「歩行」は説明できない。

歩行について考える時、どうしても足に目が向きます。

しかし、「足を前へ出す」という表現だけでは、
実際に何が起きたのかは分かりません。

大腿骨はどう動いたのか。寛骨との関係はどう変化したのか。
その時、反対側の下肢では何が起きていたのか。
さらに骨盤、脊椎、上肢は、その一歩にどう関係していたのか。

一つの構造だけを動かして歩くのではなく、
複数の構造が互いに関係を変化させながら一歩を成立させる。

構造歩行法では、この全身に生じる運動を「互動」として捉えます。


◆歩行における「足捌き」を見直す。

足をどこへ置くかだけが、足捌きではありません。

一歩を踏み出し、接地し、次の一歩へ移るまでには、
左右の足部を含めた下肢の構造間関係が連続して変化しています。

その運動が適切に行われなければ、必要以上に脚を持ち上げたり、
地面を強く蹴ったり、身体を左右へ運んだりすることで
前進しようとすることがあります。

構造歩行法【初級】では、歩行における足の運びを構造から見直し、
一歩がどのような身躰運動によって成立しているのかを実践しながら學びます。


◆大腿骨が動けば、歩行は変わる。

歩行において、大腿骨は重要な構造の一つです。

しかし、「股関節を動かす」という言葉だけでは、
大腿骨と寛骨の間で実際に何が起きているのかは明確になりません。

大腿骨がどのように運動し、それに伴って寛骨との関係がどう変化するのか。
その運動が左右の下肢、骨盤、さらに上方の構造とどう関係するのか。

構造歩行法では、脚を前後へ振るという外形だけではなく、
大腿骨そのものの運動と、その運動に伴う構造間関係の変化を扱います。


◆腕振りにも、構造がある。

歩行では「腕を振りましょう」と言われることがあります。

では、腕を振るとは何でしょうか。

肩から腕を前後させることなのか。上腕骨だけを動かすことなのか。
それとも、肩胛骨、鎖骨、肋骨、脊椎を含めた運動の中で腕が動いているのか。

構造歩行法では、腕振りを単独の上肢運動として扱いません。

下肢の運動と上肢の運動がどのように関係し、一歩という
全身運動を成立させているのか。

腕の動きもまた、歩行全体の互動の中で研究します。


◆脊椎が、歩行に参加しているか。

人間は脊椎動物です。

それにもかかわらず、歩行になると脚や骨盤ばかりが注目され、
脊椎がどのように運動しているのかは十分に意識されないことがあります。

構造歩行法で見るのは、背中を固めて「良い姿勢」を維持したまま
歩けるかどうかではありません。

一歩ごとに脊椎がどのように運動し、その運動が骨盤、肋骨、
上肢、下肢とどのような関係を持っているのか。

歩行を、脊椎動物としての全身運動へ戻していきます。


◆力まず、崩れず、ブレない歩行へ。

前へ進むために、必要以上の力を使う必要はありません。

重要なのは、身躰を固めてブレを止めることでもありません。

一歩の中で複数の構造が動き、それぞれの構造間関係が変化できれば、
一箇所だけで運動を引き受ける必要がなくなります。

構造が動き、互いに関係を変えながら全身が運動する。その結果として、
過剰に力まず、崩れず、ブレにくい歩行が成立していく。

推進力を筋力だけの問題として考えず、身躰構造全体から捉え直す。

これも、構造歩行法で扱う重要な課題です。


◆「正しい歩き方」を覚える講座ではありません。

構造歩行法【初級】では、全員を一つの歩行フォームへ
当てはめることを目的としません。

歩幅を何センチにするか、足をどの角度で出すか、
腕をどこまで振るかという外形だけを規定しても、
その形をつくっている身躰構造まで同じになるわけではないからです。

見るべきなのは、形だけではありません。

なぜ、その一歩になったのか。

自分の身躰では何が動き、何が十分に運動へ参加していないのか。
どの構造とどの構造が関係し、その関係が一歩の中でどう変化しているのか。

それを自ら観察できるようになることが、構造歩行法の重要な目的です。


◆歩行を変えることは、日常の身躰運動を変えること。

歩行は、講座の時間だけ行う特殊な運動ではありません。

日常生活の中で何度も繰り返される身躰運動です。

だからこそ、歩行の中で使われる身躰構造が変われば、
その研究は歩行だけに閉じません。

立位から一歩を踏み出す時、方向を変える時、物を運びながら移動する時、
階段を上る時、さらに走行や武術、スポーツへ運動が発展した時にも、
同じ身躰を使います。

構造歩行法で研究するのは、特殊な「歩き方」ではなく、
様々な身躰活動の基礎となる歩行そのものです。


◆構造歩行法【初級】で學ぶこと

本講座では、歩行を単なる足運びとして捉えず、
全身の構造運動として実践的に研究します。

姿勢と歩行の関係、左右の足捌き、大腿骨と寛骨の運動、腕の返し、
脊椎の運動、そしてそれらが一歩の中でどのように互動するのかを、
初級段階から順を追って學びます。

完成された歩行フォームを覚えるのではありません。

自分自身の歩行を観察し、実際に何が起きているのかを理解した上で、
歩行を身躰構造から再構築するための入門講座です。


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『構造歩行法【初級】』
ー 歩きは、すべての動作の原点である。

だからこそ、歩き方を覚える前に、歩いている身躰そのものを研究する。
足だけで歩くのではなく、全身の構造が互動する一歩へ。
構造で歩けば、身躰は変わる。
歩きが変われば、日常で繰り返される一歩一歩が、
そのまま身躰開發になります。

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